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2006年1月24日 (火)

3冊目 『雨の名前』

2冊目に紹介した『風の名前』とセットで置かれていたのが、今回紹介する本です。

『雨の名前』 高橋順子 2001.6 小学館

雨の名前』 高橋順子 2001.6 小学館

こちらの方が先に出版されていたようですが、個人的には「風」の方に先に興味が湧き、う~ん、しかし「雨」も魅力的ではあるなぁと結局2冊とも借りてきました。

昨年は空梅雨、一昨年は集中豪雨と、自然の力は時として人間の脅威とも、また大きな恵みともなりますが、雨や風への名付けをこうして眺めていると、古来、日本人は、その地理的要因に支えられた風土の中で、時に自然を敬い、畏れ、愛で、四季折々の変化に驚くほど繊細に応じてきたのだなぁと改めて思いました。

・「草の雨:くさのあめ」(春の雨) 山野に萌える草たちに烟るように降りそそぐ春の雨。このころの心躍る野歩きを「踏青(とうせい)」という。文字どおり青草を踏む。

・「万物生:ばんぶつしょう」(春の雨) 春の雨をいう。生きとし生けるものに新たな生命力を与えるということだろう。

・「青時雨:あおしぐれ」(夏の雨) 冬の季語である「時雨」に、青葉の「青」を付して、初夏の表情をだした言葉。青葉、若葉が目にしみるこの季節、その瑞々しい葉っぱからしたたり落ちるしずくを、時雨に見立てた風情のある言葉。

・「銀箭:ぎんせん」(夏の雨) 「箭」は矢のこと。夕立の雨脚を光る銀の矢に見立てたのである。

・「瞋怒雨:しんどう」(夏の雨) 「瞋怒」は目をむいて怒ることで、烈しい雷鳴を轟かせながら降る豪雨のこと。中国の言葉。

・「秋黴雨:あきついり」(秋の雨) 秋の長雨。(「黴」はカビ)

・「肘笠雨:ひじがさあめ」(季知らずの雨) にわか雨。急に降りだしてしまい、笠の用意もなく、あるいは笠をかぶるひまもなく、肘を頭上にあげて、袖を笠の代わりにすることから名付けられた風流な名。「ひじあめ」ともいう。

特定の「時」に限定された、雨の名付けもあります。

・「洒涙雨:さいるいう」(夏の雨) 陰暦七月七日の七夕の日に降る雨のこと。牽牛と織姫が逢瀬の後に流す惜別の涙とも、あるいは逢瀬がかなわなかった哀しみの雨ともいう。

・「鬼洗い:おにあらい」(冬の雨) 大晦日に降る雨のことで、「鬼やらい=追儺(ついな)」にあやかってのものか。

・「御降り:おさがり」(冬の雨) 元日、または三が日の間に降る雨や雪のこと。新年早々に降るこの雨は、農家にとってはその年の豊穣につながり、ありがたいものであった。「富正月」ともいう。

・「騎月雨:きげつう」(季知らずの雨) 「騎月」は月越しの意。月をまたぐ雨。

さて、最後にもう一つ。

・「じぼたら雨」(季知らずの雨) 和歌山市で、じめじめと降り止まない雨。

和歌山市で3年半暮らしましたが、初耳です。ちょっと嬉しくなりました。

『風の名前』も良かったですが、この『雨の名前』も負けず劣らず、その素敵なエッセーと雨の風景写真が、「雨」の世界を豊かに彩っていました。雨の匂いが美しく香る、そんな本です。

◎関連リンク◎

雨の名前(小学館)

高橋順子 四季の雨暦(コスモ石油)

・『花の名前』 高橋順子 2005.4 小学館

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