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2006年2月 1日 (水)

5冊目 『「桜と日本人」ノート カラー版』

桜、さくら。

その言葉を聞くだけで、の麗らかな美しい光景が目の前に広がり、旅立ちの記憶がよみがえってくる、特別な名を持つ花です。毎年のように新たな「さくら」が歌われ、新生児の名前ランキングでは「さくら」が常に上位にランクインしています。日本人にとって「桜」とは、単なる花ではなく、そこに歴史や民俗、文化や芸術、様々な思いを重ね続けてきた、日本というものを考えるうえで、欠かすことの出来ない重要なものの一つなのではないでしょうか。今回紹介するのは、

『「桜と日本人」ノート カラー版』 安藤潔 2004.3 文芸社

「桜と日本人」ノート カラー版』 安藤潔 2004.3 文芸社

という、まさしく「桜と日本人」の深いつながりを、様々な視点・角度から考察した本です。何と言っても、カラー版なので、その装丁が非常に美しく、たくさん収められている桜の写真も色鮮やかに映え、眺めていると心が弾んできます。目次を紹介すると、

第一章 「サクラ」とは何か

第二章 古代の「桜」

第三章 「桜」に魅せられて

第四章 「桜」の民俗

第五章 お江戸の「桜」

第六章 「さくら」とことば

第七章 「桜」を象る

第八章 「サクラ」の名を借りて

第九章 暮らしの中の「さくら」

となっていて、九つの章と約五十の項目で構成されています。

作者はまえがきにおいて、

「さ・く・ら」ということばが耳に聞こえてきた時、その音感も含めて、人にはそれぞれどんなイメージやどんな心の動きが生まれるものなのでしょうか。そういうことを一つ一つ取り上げて、私はいつか、桜と日本人との関わりの全てを手操ってみたいと思うようになりました。

と記しており、「桜」に対する情熱が伝わってきます。

実際、この本を読み進めてみると、桜の歴史的な文脈を追うだけでなく、「桜」の切手や、その名を持つ日本酒を紹介したり、「桜」のつく地名を探ったり、「花咲爺」や「遠山の金さん」を取り上げたりと、まさしく「桜と日本人」の関わりを探るために、幅広い探求がなされていて、読者を飽きさせません。

ただ、その幅を広げているために、まだ解明されていない項目も扱うことになり、その点は解明が待たれるところですが、それらを含めても非常に面白く、興味の尽きない取り組みであると思います。日本古謡「さくら」(♪さくら さくら 弥生の空は)に関する疑問として、元となった古謡とは何か、なぜこれほど日本人に親しまれるに至ったのか、などが挙げられており、解明への取り組みは今後も続きそうですが、今から非常に楽しみです。

「サクラ」の語源としてはいくつか説があるようですが、作者曰く、

「農作業(稲作)を始める時期に咲き、その年の収穫の吉凶を占うべき、最も神聖かつ美しく大切な花」

との心情が込められた言葉だそうです。

私が「桜」を想像するとき、それはおそらく「ソメイヨシノ」なのですが、作者によれば、執筆段階で367種の桜が確認出来ており、今後も新種や未発見のものが見つかっていくのは確実なようです。一口に「桜」といっても、日本全国を見渡せば、それは千差万別であり、各地に伝説の桜や、天然記念物に指定された桜など、様々な桜が存在していることを知りました。やはり「桜」は、私たちにとって、身近にして相当奥の深いもののようです。

最後になりますが、この桜を扱った美しい装丁の本は、本棚にも花を咲かせてくれることでしょう。

追記1:2006年4月14日(金)

そういえば、平成の大合併で「さくら」という名前のついた自治体が誕生していたような気が。早速調べてみると、2005年3月28日に栃木県でさくら市が誕生していました。ちょうど桜の開花の時節に自治体も出発したんですね。

これまでは「さくら」という名の自治体といえば千葉県佐倉市が思い浮かびましたが、栃木県さくら市は本当に「桜」の「さくら」だけに、記憶に残りますね。ただ、地名として名乗るのは、なんとなく微妙な感じもします。「さくら」と聞いて、日本のこの場所だ!という、人々の共通認識はあまりないのではないでしょうか。

ともあれ、もしもさくら市の方と知り合いになれたら、ぜひ手紙を書きたいです。住所を書くのがちょっと嬉しいかも。もちろん、さくら市から届く郵便はさらに嬉しいでしょうね。ちなみに、さくら市の人口は約4万人だそうです。今後、出会いがあるのかなぁ。

栃木県さくら市

さくら市の「桜」開花情報

追記2:2006年4月14日(金)

京都・伏見の醍醐寺といえば、豊臣秀吉が催した「醍醐の花見」の舞台として有名ですが、その醍醐寺で話題になっているのが、しだれ桜「土牛(とぎゅう)の桜」のクローン桜です。

醍醐寺・しだれ桜「土牛の桜」

「土牛の桜」は推定樹齢が150歳に達していて衰えが見られることから、クローン技術で「土牛の桜」を増殖させ、そのクローン桜は昨春初めて、わずかながら花を咲かせたそうです。そして今年、クローン桜は昨春に比べてたくさんの花を咲かせたそうで、先日ニュース番組でたまたま目にしたのですが、その姿は若木ながら確かに血筋を感じさせる(というかクローンなんですね)美しく立派なものでした。今から100年後、このクローン桜は人々の目を楽しませているのでしょうか。クローン技術は、このような場面にも用いられているんですね。

話の筋から逸れますが、昨年大きな話題となった「ど根性大根の大ちゃん」、その強靭な生命力で、もし子孫が無事成長していけば、いつの日かブランドになるかもしれないですね。

バイオ技術で増殖した『土牛の桜』のクローン桜(住友林業)

・『がんばれ大ちゃん』 みやざきあゆみ 2006.3 恒星出版

追記3:2006年4月14日(金)

「桜の開花をあらわすのに『○分咲き』という表現があるが、『○割』と言うのが適切ではないか」

との問い合わせがNHK放送文化研究所にあったそうです。そう言われると、確かに当たり前のように使っている『○分咲き』という表現は、なぜ『○割咲き』ではないのかという疑問が湧いてきました。詳しくは下の記事を参照ください。

○割○分○厘と聞くと、頭の中にはプロ野球のことが浮かんできますが、それはさておき『○分咲き』という表現だけでなく、咲き始めの頃に、『一厘咲き』という表現を耳にしたことがありませんか?うんと思ったあなたは、私のお仲間です。これって『一厘』じゃなくて、『一輪』なんですね。えっ?そんな間違いしないって?すいませんでした(汗)

サクラサク - ことばウラ・オモテ(NHK放送文化研究所)

◎関連リンク◎

カラー版 「桜と日本人」ノート(文芸社)

ニッポンの桜だより(今日のニッポン)

北海道松前郡松前町

「さくら」を冠する歌(Yahoo!ミュージック)

『心に残る桜ソングNO.1は!?』(ORICON STYLE)

名前ランキング2005(明治安田生命)

新書マップ 桜と花見

・『百分の一科事典・サクラ』 スタジオ・ニッポニカ 1998.4 小学館(小学館文庫)

・『桜が創った「日本」』 佐藤俊樹 2005.2 岩波書店(岩波新書)

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