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2006年4月11日 (火)

9冊目 『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』

「あなたの好きな食べ物は何ですか?」

そう聞かれたら、みなさんは何と答えますか?「寿司」でしょうか、「焼肉」でしょうか、それとも「ラーメン」でしょうか。もちろん人それぞれに、私はこれだ、という食べ物があると思いますが、ここで忘れてはならない食べ物があります。そう、「カレーライス」です。

学校給食で待ち遠しかったカレーライス。家庭では今やおふくろの味となっているカレーライス。子どもから大人まで、多くの人が愛してやまないカレーライス。一体どうして日本人はこんなにカレーライスが好きなのでしょうか。今回紹介するのは、まさにこの問いをタイトルとして掲げたこの本、

『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』 井上宏生 2000.11 平凡社(平凡社新書)

日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』 井上宏生 2000.11 平凡社(平凡社新書)

です。目次を見てみると、

プロローグ カレーとはいったいなんだ?

第一章 カレーは文明開化のクスリだった

第二章 日本でカレーはどう変身したか

第三章 カレーライスの先駆者たち

第四章 日本の軍隊はカレーが好きだった

第五章 奇跡の再生と百花繚乱のカレー

エピローグ カレー好きな日本人の不思議

となっており、日本におけるカレー史を紐解きながら、日本人とカレーとの、切っても切れない強い結びつきに迫っていく内容となっています。

さて、カレーライスは一体いつごろ日本に伝わったのでしょうか。本書によれば、明治維新(1868年)から数年が経った1972年に出版された、『西洋料理指南』『西洋料理通』という本でカレーが紹介されていることから、この頃にカレーが伝わっていたのは確かなようです。

みなさん、ここで重要な事実に気づきましたか?重要な事実とは、カレーは西洋料理として日本に伝わったということです。今ではカレーの本場がインドであることはほとんどの人が知っていることだと思いますが、日本にカレーを伝えたのはインドではなく、イギリスだったのです。つまりカレーは、インド→日本というルートではなく、インド→イギリス→日本というルートによって、間接的に日本にもたらされたのです。よく、日本のカレーはインドのカレーとは別物だということを聞きますが、それもそのはず。日本に紹介されたカレーは、インドで味わったカレーの味が忘れられず、本国イギリスでも食したいと、イギリス人が独自に作ったイギリス風のカレーだったのです。

明治といえば文明開化の時代であり、脱亜入欧の思想のもと、西欧諸国に追いつこうと、西欧の文化や生活が積極的に取り入れられた時代です。著者は、もしもカレーが当時、インドの料理として日本に紹介されていたら、これほどまでに日本人に受け入れられただろうかと読者に疑問を投げかけていますが、これには思わず、う~むと考えさせられました。

西洋料理として日本に伝えられたカレーでしたが、それは私たちに馴染みのある今のカレーとは少し違うものだったようです。先ほどの『西洋料理指南』のカレーの作り方を見ると、その材料として、ネギ生姜ニラエビタイカキ赤蛙といった食材が挙げられています。私たちに馴染みのある、じゃがいも、人参、たまねぎは出てきません。これらの食材がカレーの材料として用いられるようになったのは、もう少し後になってからのようです。

カレーといえば、なにもカレーライスだけではありません。今私たちの周りには、カレーうどんやカレーパンが人気のメニューとして存在しています。今では当たり前となっているこれらのメニューですが、その誕生の影には様々な苦心と創意工夫があったようです。

カレーの人気が高まっていくにつれて、そば屋やうどん屋からは客足が遠のくようになっていきました。店が存亡の危機にさらされる中で、ある店主が「ご飯にカレーが乗っているなら、うどんにカレーが乗ってもおかしくないはずだ」と考え、試行錯誤の末、カレーうどんを誕生させました。時は1904年ごろ、東京・早稲田にあった「三朝庵」という店で、その後、カレーうどんが人気となり、店はにぎわいを取り戻したそうです。

明治時代に伝わったカレーは、その後日本で着実に人気を広げていきましたが、戦争による負の歴史も背負ってきました。

ちなみに、太平洋戦争中、陸軍は英語を敵性語として徹底的に排斥している。その影響はわれらがカレーにもおよんでいる。長年、陸軍はカレーを「カレー汁」と呼んでいたが、戦時中、「辛味入汁掛飯」と呼ばれるようになった。カレーの三文字が敵性語だったからである。ただし、海軍では終戦まで「カレー」と呼んでいた。ドイツ流の陸軍が厳格だったのに比べ、イギリス流の海軍はリベラルだったからだといわれている。

ここ数年、札幌発のスープカレーの人気が日本全国に広がりました。カレー好きの日本人が、次は一体どのような新たなカレーの美味しさを見つけるのか、楽しみに待ちたいと思います。

追記1:2006年4月13日(木)

最近、緒形直人さんが出演しているハウス食品「北海道ホワイトカレー」のCMをよく見かけます。スープカレーの次はホワイトカレーがブームになるんでしょうか。白いカレーというのは、なんともインパクトがありますね。恐るべし北の大地。

北海道発祥のホワイトカレーはもう食べた?(Excite)

北海道ホワイトカレー(ハウス食品)

追記2:2006年4月13日(木)

2005年の大ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』と、今回紹介した『日本人はカレーライスがなぜ好きなのか』に共通することとはなんでしょうか?一つは新書であること。新書は出版界で現在、最も話題性があり、数十社が乱立する戦国の様相を呈しています。そしてもう一つはタイトルに「なぜ」があること。このことについて書かれた記事を本よみうり堂で見つけたので、ここにリンクしておきます。

なぜ多い?「なぜ」と問う本(本よみうり堂)

追記3:2006年4月13日(木)

中国といえば広く深い食文化を育んできたという印象がありますが、カレーに関して言えば、これまであまりメジャーな食べ物ではなかったようです。その中国に日本式カレーを広めようと、日本の各食品メーカーが次々と中国市場向けの商品を開発しているそうです。下の記事は二つとも2005年のものですが、その後果たして日本発のカレーは中国で普及していっているのでしょうか。気になるところです。

中国味の家庭用カレー発売(NIKKEI NET)

「レトルト文化」、中国で広げたい(NNA)

追記4:2006年4月14日(金)

私には忘れられないカレーがあります。何という名前の商品だったかは分かりませんが、その商品のCMだけは今でも鮮明に憶えています。木村佳乃さんがカレーを作りながら、「♪10分でカレーをつくろ~よ」と歌っているCMです。それを手がかりにして検索してみたところ、ハウス食品の「カレークイック」であることが判明しました。

カレークイック うまみとコクの中辛(ハウス食品) カレークイック スパイシーな辛口(ハウス食品)

あれ、すごく美味しかったんですよ。商品は調理時間を売りにしていたようですが、野菜(特にじゃがいも)がシャキシャキとした触感のまま味わえるカレーというのはすごい新鮮で、その当時は実家にいたのですが、夕食がカレーの時、何度かそのカレーを食べてました。結構好きだったので、出来ることならもう一度食べてみたかったのですが…。食べた記憶も結構前ですが、いつごろ見かけなくなったのかも正直思い出せません。

そこでさらに検索してみたところ、「カレークイック」は1999年の初めごろに発売され、2000年1月に製造中止になったそうです。そうやったんや…、実質1年くらいしか発売されてなかったんですね。

メーカー(ハウス食品)の評価としては、

『当初は手軽さで評価されたが、ネーミングやパッケージがレトルトカレーと間違えられることが多く十分浸透しなかった』

そうです。検索していると、美味しかったという意見がある一方で、美味しくない、これはカレーじゃない、という意見もありました。ん~、でももう一度食べたいな~。

さてさてホワイトカレーは1年後どうなっているのでしょうか。検索中、面白いページを見つけたのでリンクしておきます。おっと、ここの記事、相当長くなってきたな~。さすがカレー!

復活してほしいもの(食べ物)

追記5:2006年4月25日(火)

『めざましテレビ』(フジテレビ系列)で、めざましどっち?というコーナーがあるのですが、4月17日の放送の質問が、「カレーのつけあわせといえば…福神漬け or らっきょう?」というものでした。結果は福神漬けが86.6%(32,456人)、らっきょうが13.4%(5,009人)で、福神漬けの圧勝でした。番組の調査では、外国の人はらっきょうを選んだ人が多かったそうです。私はらっきょうが苦手なので、福神漬けを選びます。

今日、4月25日の『おはよう朝日です』(朝日放送)で、「カレー消費量日本一?鳥取カレー三昧の旅」という特集がありました。私はこれまで、鳥取に対してカレーのイメージは全く無かったのですが、調べてみると、鳥取市は一世帯当たりのカレーのルー購入量が全国一なんだそうです。特集では、カレーンジャーという鳥取のカレー文化を全国に発信しようと活動している人たちが出てきました。鳥取は全国有数のらっきょうの生産地でもあります。

めざましテレビ(フジテレビ)

鳥取カレー三昧の旅(朝日放送)

鳥取カレークラブ カレーンジャー

鳥取カレー倶楽部発足 "食文化"全国に発信(日本海新聞)

砂丘らっきょう(とっとり砂丘王国)

追記6:2006年8月3日(木)

4月にここで取り上げた「北海道ホワイトカレー」が、ここに来て熱気を帯びてきています。なんでかなと思ったら、これまで北海道と西日本限定での販売だったそうです。全然知りませんでした。8月7日から全国発売されます。

どうしても食べたくて、一度だけレトルトの「北海道ホワイトカレー」を食べました。口当たりはとてもまろやかで、辛さも控えめでした。見た目は本当にシチューそっくり。なかなか美味しかったですが、個人的には普通のブラウンのカレーがやっぱりいいなと思った次第です。

北海道で白いカレー人気 7日から全国発売へ(SANSPO.COM)

追記7:2006年9月17日(日)

追記5で、『めざましテレビ』(フジテレビ系列)の、めざましどっち?というコーナーのことを取り上げましたが、9月4日の放送では、「カレーにかけるとしたら…しょうゆ or ソース?」という質問が出されていました。結果はしょうゆが26.5%(9,417人)、ソースが73.5%(26,067人)で、ソースが全体の約4分の3の支持を集めていました。

驚いたことに、カレー専用のしょうゆ、ソースというものまであるようです。個人的には、どちらもかけないですね。余談ですが、子どもの時に、ごはんに海苔を敷いて、その上にカレーをかけて食べていたことをふと思い出しました。

めざましテレビ(フジテレビ)

「家カレー」もツウの味に! カレー専用ソース(Excite)

カレー名人のウスターソース(蛇ノ目食品 廣田徳七商店)

洋食屋さんのカレー醤油(湯浅醤油)

◎関連リンク◎

日本人はカレーライスがなぜ好きなのか(平凡社)

カレー博物館(横濱カレーミュージアム)

カレー資料館(ハウス食品)

スープカレーの歴史(ハウス食品)

こんなのいいね! 北海道ホワイトカレー(ハウス食品)

カレーの街よこすか(神奈川県横須賀市)

華麗なるBIT CURRYの世界

カレー天国(BRUTUS ONLINE)

『食』に関する調査資料(農林中央金庫)

カレーライス(新書マップ)

・『カレーライスと日本人』 森枝卓士 1989.2 講談社(講談社現代新書)

・『カレーライスの誕生』 小菅桂子 2002.6 講談社(講談社選書メチエ)

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