« 13冊目 『陰日向に咲く』 | トップページ | 幸せの赤い紙袋 »

2006年6月16日 (金)

14冊目 『図書館の神様』

なにかと傷心の私はっちは、またしても自然と小説を手にとっておりました。今回紹介するのは、

『図書館の神様』 瀬尾まいこ 2003.12 マガジンハウス

図書館の神様』 瀬尾まいこ 2003.12 マガジンハウス

です。私が瀬尾さんのことを知ったきっかけは、確か新聞の記事であったと記憶しているのですが、中学校で国語の講師をしながら小説を書いているとのことで『先生をしながら小説を書けるなんて素敵やなぁ』と、まだ何も読んでいないにも関わらず、瀬尾さんに好感をもったのでした。

それから、いつか読みたいなぁと思っていた私が、瀬尾さんの作品の中から初めて手にしたのが、瀬尾さんにとって2冊目の単行本となった『図書館の神様』でした。本の帯には「爽やかな青春物語」「誰もがきっと好きになる。話題の作品」と記されています。いくつかの作品の中から『図書館の神様』を選んだのは、やっぱりタイトルの良さ。「図書館」というコトバがタイトルに含まれているだけで、何とも魅力を感じてしまい、この本を選んだのでした。その後、しばし本棚で積読本となっていたのですが、この本を今こうして再び手にしたのは、今が自分にとっての読み時だったからなのでしょうか。

主人公の早川清(きよ)は、国語科の講師として、4年後には統合されることが決まっている鄙びた高校に赴任します。講師になったのは、ある目的があったからなのですが、その目的は赴任早々にして果たせず、清は思いがけずして、文芸部の顧問になります。文芸部の部員は三年生の垣内君ただ一人。「男は二十歳までは多少無理してでもスポーツすべき」との持論を持つ清は、文芸部の活動に違和感があり、こんな部活動何の意味があるのだろうとさえ思っています。文学が面白いわけがないと思っている清は、垣内君が文芸部で活動していることが納得できず、「どうして?」と彼を質問攻めにする始末。国語講師で文芸部顧問だけれど文学の面白さが分からない、そんな清は、文学を面白いと感じている高校生の垣内君との交流を通じて、少しずつ文学に対して、そして垣内君に対して気持ちを変化させていきます。

清には、甘えられて一緒にいると気持ちが満たされる浅見さん、そして清とはまったく逆の人間で、要領がよく、底抜けに優しい弟の拓実がいて、この二人との日常も描かれています。清が背負ってきた仄暗い過去、浅見さんとの関係、そして高校での講師と顧問としての日々。それらは連なりながら、時間の流れとともに少しずつ変化していきます。講師としての1年間がもたらした、清の心の変化と清を取り巻く人々との関わりの変化。仄暗さを時に漂わせながら、寂しさと切なさを胸に秘めながら、しかしそこには優しさと青春の瞬間があった。日常の中のささやかな喜びと悲しみを綴ったドラマに、読後、自分の中に積もっていたいろんな気持ちがふぅっと風になって出ていきました。

清の弟の拓実、すっごくいいやつです。その感性と生き方、そして優しさにすごく惹かれました。垣内君もとても魅力的なキャラクターでした。雑草の詩、素敵でした。あんまり素敵だったのでここに載せようかと思ったのですが、詩との出会いの機会を雑にしてしまってはいけないので、そこはみなさんご自身で本を開いて出会ってくださいね。「黙るべき時を知る人は言うべき時を知る」、大人びた風格と若き青春の血潮を感じさせるそんな垣内君から元気をもらいました。

読後、もう一度よく本の表紙を見てみると、これは清と垣内君が青春している場面だと気がつきました。文芸部は走るのです。青春なのです。

瀬尾さん、素敵な物語をありがとうございました。瀬尾さんは現在、京都府の中学校で、国語科の教諭として勤められています。学校に勤務されているだけあって、瀬尾さんの小説には学校のリアリティが非常に感じられます。教員採用試験の場面もあり、講師として長年やってこられた瀬尾さんの人生が非常に反映されている気がしました。

◎関連リンク◎

図書館の神様(MAGAZINEHOUSE)

瀬尾まいこ(Wikipedia)

☆トラックバックさせて頂いた記事☆

『図書館の神様』 マガジンハウス(瀬尾まいこ応援BLOG!)

|

« 13冊目 『陰日向に咲く』 | トップページ | 幸せの赤い紙袋 »

小説・物語」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 14冊目 『図書館の神様』:

» 『図書館の神様』 マガジンハウス [瀬尾まいこ応援BLOG!]
図書館の神様瀬尾まいこ著出版社 マガジンハウス発売日 2003.12価格  ¥ 1,260(¥ 1,200)ISBN  4838714467アクシデントで夢をあきらめ、傷ついた心を抱え、国語教師としてある高校に赴任したヒロイン清(きよ)。彼女が学校の図書館で出会ったひとりの男の子、垣内君...... [続きを読む]

受信: 2006年7月 6日 (木) 02:01

« 13冊目 『陰日向に咲く』 | トップページ | 幸せの赤い紙袋 »