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2006年12月 4日 (月)

26冊目 『実験小説ぬ』

ガサッ…

ん?今、何か音がしたような。気のせいかなぁ。普段あまり小説を手に取らない私ですが、ちょっと前から気になっている小説がありました。それが今回紹介する、

『実験小説ぬ』 浅暮三文 2005.7 光文社(光文社文庫)

実験小説ぬ』 浅暮三文 2005.7 光文社(光文社文庫)

です。まず、この表紙を見てくださいよ。

「ぬ」

このインパクトだけで、ちょっと手に取ってみたくなります。そして「ぬ」の前には「実験小説」の文字が。よし、読んでみるか。

ガサリ…

この本には短編、中編合わせて27編もの作品が収められています。目次を紹介すると、

第一章 実験短編集

帽子の男/喇叭/遠い/カヴス・カヴス/お薬師様/雨/線によるハムレット/小さな三つの言葉/壺売り玄蔵/參

第二章 異色掌編集

何かいる/タイム・サービス/再会/隣町/行列/海驢の番/貰ったけれど/砂子/ワシントンの桜/ベートーベンは耳が遠い/黄金の果実/箴言/生徒/穴/進めや進め/カフカに捧ぐ

これはあとがきではない

というラインナップになっています。あれ?26編しかない、と思われた方。最後をよく見てください。この本に「あとがき」はないんですよ。

読んでみての感想ですか?なんというか、親父ギャグ的なものから、シュールなもの、ホラーなものなど、ものすごく作品の幅が広いです。親父ギャグという言い方はちょっとマズかったですね。その先入観でこの本を読んでしまうともったいないので、「小粋なおやっさん的」に改めます(どう違う?)。

タイトルに実験小説とあるように、普段私たちが親しんでいるような小説とは一味違っています。視覚的な表現と文章を同時に楽しんだり、この本を捲るという行為そのものが小説を成り立たせていたり。ある種の分かりにくさがこの本に深みを与えているという印象を受けました。

私が心に残ったのは、まず「お薬師様」。これは一度読み通してから、二週目でふむふむなるほど、事情が分かってくるという作品です。解説の豊﨑由美さんが、

「フリオ・コルタサルの『石蹴り遊び』風の試みがなされたゲーム小説。」(P284)

と書かれていましたが、私もこの作品を読んでゲームブックを思い出しました。

みなさん、ゲームブックをご存知でしょうか。最近はあまり見かけなくなったのですが、本を開くと文章の塊に数字が順番に割り振られていて、ページごとに読んでいくのではなく、指定された数字の文章に読み進めていくという本です。巻末にアイテムやステータスを書き入れるシートがあり、子どもの時は夢中になってやっていました。家にファミコンもスーファミもなかったので(祖父母の家にあった)、ゲームブックを集めて40冊くらい持っていたように思います。小学生のとき、自分でゲームブックを作って、クラスの友達に回していたのを思い出しました。今考えると、ゲームだけれど読書している「ゲームブック」って、すごい魅力のあるもののように思えてきました。

ちょっと脱線しましたが、続いては「海驢の番」

荒れる冬の海を前にして、僕は手にした辞書を開いた。集英社版『暮らしの中のことわざ辞典』。その海驢の項にこう書いてある。

【海驢の番】 交代して眠ることを言う。海驢はオットセイによく似た獣で、群れをなしており、眠るときには島に上がるが、一頭は必ず眠らないで番をしている。(P226)

「海驢の番」という言葉を出発点にして、「海驢の番のことを、一体誰が番しているのか」という、無限ループになりそうな疑問を解決すべく、答えを求めて海驢に会いに行く男の話です。コトバに興味がある私にとって、この短編は魅力的でした。

先程少し触れましたが、この本には「あとがきではない」ものがあります。そして実はそこで、この作品のタイトルの真の意味が明かされています。この本を手にした時…!!!おっと、紹介はこれくらいにしておきましょう。

奇想天外な27編、きっと読む人によって惹かれる作品は違うと思いますが、とても楽しくて奇妙な作品集でした。余談ですが、作者の浅暮三文さん、bk1でいくつかの自分の作品にコメントされています。

ガサガサ…。

◎関連リンク◎

実験小説ぬ(光文社)

実験小説ぬ(WEB本の雑誌)

著者コメント 浅暮三文(オンライン書店ビーケーワン)

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