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2007年1月 6日 (土)

27冊目 『小さい“つ”が消えた日』

やっぱり本屋さんはいいですね。普段はネット書店を利用することが多いのですが、正月休みに久々にゆっくりと本屋さんの中を見て回って、またいろいろな本との出合いがありました。ネットだと、どうしても自分の興味に偏った直接的な検索によってしか本に辿り着けないのが、本屋さんだとザ~ッと本を見渡せるので、「おっ!」という発見がたくさんあって楽しかったです。さて今日紹介するのは、私が今年最初に手に取った、

『小さい“つ”が消えた日』 ステファノ・フォン・ロー 2006.11 新風舎

小さい“つ”が消えた日』 ステファノ・フォン・ロー 2006.11 新風舎

という本です。「コトバ」に関心を寄せている私は、この本が以前から気になっていたのですが、本屋さんでじっくり本を見て回っているときに見つけて、今年はこの本からスタートしようと思いました。

「もし小さい“つ”に音がないのなら、なくてもいいんじゃないの?」(P12)

そう言った『私』に、

「そんなことはないんだよ。音がなくても小さい“つ”はとても大切なんだ。」(P12)

と、『おじいさん』は五十音村の住人たちの話をしてくれたのです。

目次を紹介すると、

小さいころの三つの思い出

五十音村の住人たち

ある夏の夜の出来事

小さい“つ”、家出をする

小さい“つ”の大冒険

思いがけない提案

小さい“つ”へのメセージ

小さい“つ”はどうやって見つかったのか

三つの習慣

となっています。

まず、文字たちに性格があるという発想が新鮮で面白かったです。どうして作者はこの文字にこんな性格を与えたのかなと考えたり、自分だったらどんな性格にするだろうと考えるのが楽しかったです。

作品中、財産を持っている「い」と「し」、お金のない「は」が登場するのですが、みなさんどうしてなのか分かりますか?私はなんでかなぁとちょっと考えたのですが、文字を呼び捨てにするのではなく、敬称(~さん)をつけてみると…、なるほど。作者のユーモアが垣間見れます。

この物語は日本語の五十音が主役になっているのですが、作者のステファノ・フォン・ローさんはなんとドイツ出身。五十音村の住人たちの人物描写の上手さとユーモアは絶妙だったので、驚きました。そうか、いつも私の胸にある『ユーモアとは、にもかかわらず笑うことである』はドイツのユーモアの定義だったことを思い出しました。まさにドイツ流のユーモアに触れることが出来たのだと思います。

この物語の主人公、小さい“つ”は、かわいい男の子です。彼は一言も話すことが出来ません。ある時、五十音村で誰が一番偉いかという話になって、その話はとうとう誰が一番偉くないかという方向に進んでしまい…。

小さい“つ”がいなくなってみんなが気づいた大切なこと、そして小さい“つ”への「メセージ」。P36の小さい“つ”への残酷な嘲笑は、P86の本当に君の存在が必要なんだという気持ちに変わっていました。小さい“つ”が抜けてしまって、伝えたいのに伝えきれないその「メセージ」に、ちょ×とグ×ときました。

「沈黙」は発音できないけれど、だから必要ないわけではない。むしろ「沈黙」がなくなってしまえば、この世界を表す他の言葉も成立しなくなってしまう。数字の“0”もそうかなぁと思いました。

物語は平易で読みやすかったですが、読み手に深い思索をもたらす素敵な本でした。そして独特の絵のタッチ、特に小さい“つ”の可愛らしいこと。本を捲っていくと小さい“つ”がページの端っこを引っぱってみたり、動き回っていたり、とても微笑ましかったです。

新風舎の特設サイトで、本では詳しく語られていない「五十音村の住人たち」のことや、住人たちへの質問とその応答などを見ることが出来るので、読んだ後も楽しみが多いです。

~~その後……

残念ながら新風舎の書籍は書店で見られなくなりましたが、現在三修社から出版されているので、是非手に取ってみてくださいね

『小さいつが消えた日』(三修社)

◎関連リンク◎

小さい“つ”が消えた日(新風舎)

第26回新風舎出版賞大賞受賞作 小さい“つ”が消えた日(新風舎)

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