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2007年6月17日 (日)

39冊目 『頭のうちどころが悪かった熊の話』

世の中には本当にたくさんの本があって、自分が手にしている本は「ほんの」一握りなんだなと改めて思います。そして、そんな自分が手にした僅かな本の中でも、折に触れて何度も読み返している本は果たして何冊あるのだろうかと考えると、そのような本と出合えることがどれほど幸運なことなのかとつくづく思えてきます。今日私が紹介するのは、

『頭のうちどころが悪かった熊の話』 安東みきえ 2007.4 理論社

頭のうちどころが悪かった熊の話』 安東みきえ 2007.4 理論社

という本です。

いきなりですが、何なんでしょうか、このインパクトのあるタイトルは。一度聞いたら忘れられないばかりでなく、『熊が頭をうったんだ』『しかもうちどころが悪かったらしい』『それからどうなったんだろう』と、本を開く前に私の頭の中で物語はすでに始まっていたのです。

実際に本を手にとって見ると、これもインパクトのあるもので、うつろな目をした熊が座っていて、しかも頭には表情のあるたんこぶが!

そんなわけでわくわくしながら本を開いてみると、

人生について考える7つの動物寓話

とあり、本書には、

頭のうちどころが悪かった熊の話

いただきます

ヘビの恩返し

ないものねだりのカラス

池の中の王様

りっぱな牡鹿

お客さまはお月さま

という7つの物語が収められていました。先ほど、「人生について考える~」なんてありましたが、私は物語から堅苦しさを感じませんでしたし、下和田サチヨさんが描かれている暖かみとユーモアのあるイラストが随所に織り込まれていて、素敵な本だなと思いました。

物語にはいろんな動物たちが登場しますが、私は「ヘビの恩返し」が一番好きでした。ある出来事があってすっかり変わってしまった父さんヘビと母さんヘビ。そんな両親を前にして、子ヘビがとった行動。

「父さんといい、母さんといい、なんてひどい親たちだ」

ヘビの子はその場でくねくねとひねくれた。

「もうぼくは、ぐれてやるぞ」(P49)

これは物語なんだと分かっていつつも、ヘビがぐれようとしてくねくねしている様子を思い浮かべてしまい、微笑まずにはいられませんでした。

この物語に登場する動物たちはみんな、家族や友人、そして愛する誰かのことを思っています。喜び、悲しみ、悩み、そして思いやる彼らの姿はいつかの私たちなのかもしれません。読みやすいので、読もうと思えばすっと読んでしまえます。確かにすっと読めたのですが、何故かしばらくしてからまた読みたくなってきました。この不思議な感覚を、表題作「頭の~」に登場した百一歳の亀のおじょうさんと重ね合わせている自分がいました。

「彼女はとてもゆっくり生きてるものだから、考えることもゆっくりでね。きみが今きいた言葉は、ぼくがきのう話しかけたことへの返事っていうわけさ」(P12)

時間を置いて浮かび上がってくる自分の気持ち、そんなゆったりとした時間の風を運んでくれた一冊でした。

追記1:2009年9月21日(月)

すいません、今の今まで知らなかったのですが、『頭のうちどころが悪かった熊の話』の安東みきえさんとイラストを描かれている下和田サチヨさんのコンビによる作品『まるまれアルマジロ!』が今年の3月に発売されていたんですね。また読む楽しみができました。

まるまれアルマジロ! 読みたい本だな(YOMIURI ONLINE)

・『まるまれアルマジロ!』 安東みきえ 2009.3 理論社

◎関連リンク◎

頭のうちどころが悪かった熊の話(本よみうり堂)

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平成19年度も四分の一が終わりました。 3ヶ月の締めくくりに読んだ本は、人生について考える7つの動物寓話。 『頭のうちどころが悪かった熊の話』安東みきえ著 下和田サチヨ絵(理論社) 2編めの「いただきます」でトラとキツネとニワトリとトカゲとクモとハエの話を聞いていた旅人が、6編めの「りっぱな牡鹿」の最後の場面で登場します。 牡鹿のホーイチは、「意味ってなんだ」と考え、意味のない行動をしようとしてなにをやったところで意味を見つけだしてしまうことへの失望感にうちのめされ、「ぼくのやったことは意味が... [続きを読む]

受信: 2007年7月 1日 (日) 20:52

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