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2007年7月 1日 (日)

42冊目 『アヒルと鴨のコインロッカー』

この4月から新しい会社で働き始めて、早や三ヶ月が経とうとしています。業種が変わったことで職場環境も全く違ったものになったのですが、私が感じている最も大きな違いは、ここには同年代の職員が大勢いるということです。

このブログでも何度か書いてきましたが、以前勤めていた工場では自分を含めた若い層は少なく、中高生の親であるおっちゃんやおばちゃん達が大勢を占めている職場だったので、同年代との交流が殆どなかったのです。それを思うと今の職場は、自分と同じようにいろいろな場所で働いてからここへ来たという人が多いので、お互いいろいろあったねと昔を懐かしみながらこの場所で頑張っていこうと励ましあえる仲間が多く、同じ時代を生きてきたもの同士の心地よさを感じながら働いています。

中には読書好きの人もいるので、通勤時や休憩時間にそんな話をすることもありますが、同期の中でもすごく本を読んでいる子がいて、作家名や作品名がすらすらと出てくるので驚いたことがありました。それで聞いてみると、ここに来る前に書店で働いていたそうで、なるほどと思いました。

私はこれまで、いろんな人の書評を読んだり、本屋さんを巡ったりしては自分が読みたい本を選んできましたが、あまり人が薦めてくれた本を読んだことがなかったように思います。それで、私はその子に自分が面白いと思った本を薦めた手前、その子が薦めてくれた本を読むことにしたわけです。

はぁ、前置きが長くなりましたね。というわけで今回私が手に取ったのは、

『アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎 2006.12 東京創元社(創元推理文庫)

アヒルと鴨のコインロッカー』 伊坂幸太郎 2006.12 東京創元社(創元推理文庫)

という本です。タイトルから話の筋を全く想像できなかった私は、とりあえず頁を捲っていくことにしました。

大学生活の始まりを新しい町で迎えるために引っ越してきた椎名。物語は椎名が奇妙な隣人・河崎と出会い、ある事件に巻き込まれていったことで動き始めます。

「一緒に本屋を襲わないか」

教訓を学んだ。本屋を襲うくらいの覚悟がなければ、隣人へ挨拶に行くべきではない。(P24)

不可解な隣人との出会いから事件に巻き込まれていこうとする椎名の現在から一転して、物語の舞台は二年前へ。ペットショップで働く琴美、そして彼女と暮らしているブータン人留学生のドルジ、そんな二人に不気味な悪意がひたひたと迫りつつありました。

琴美たちに何かがあった「二年前」、そして椎名が奇妙な出来事に巻き込まれていった「現在」、2つの時を繋いでいると思われる存在が「河崎」でした。現在と過去を行き来しながら、物語は少しずつその事件の輪郭を明らかにしていきます。徐々にスピードを上げていく二つの時間の交差、そしてそれがついに焦点を結んだとき、悲しい事件の全貌が明らかになります。不可解だった河崎の言動。真実を前にしたとき、それらはすべて納得のいくものであったと読者に認識させるものでした。

僕は、自分こそが主人公で、今こうして生活している「現在」こそが世界の真ん中だと思い込んでいた。けれど、正確には違うかもしれない。河崎たちが体験した「二年前」こそが正式な物語なのだ。主役は僕ではなくて、彼ら三人だ。(P347)

最初、その言葉から全く何も想起できなかった本書のタイトルでしたが、読後、止まってしまった彼ら三人の時間と存在が、しかし確かにあったのだと主張していたんだなぁと私には感じられました。

いろいろな方の書評を巡っていますが、以前から伊坂さんの作品の人気の高さを感じていただけに、私は期待をもってこの本を手に取りました。テンポの良さ、そして一気に読みたくなる物語の構成。明らかになった真実を前にして、なるほどなと頷きながら、私は辻褄のあった「河崎」の今を読み返してみたのでした。薦めてくれた子が、これをどうやって映像化したのかが楽しみだと言っていたことにも頷いた私でした。

◎関連リンク◎

アヒルと鴨のコインロッカー(東京創元社)

アヒルと鴨のコインロッカー 映画化(東京創元社)

映画「アヒルと鴨のコインロッカー」公式サイト

作家の読書道:第31回 伊坂幸太郎(WEB本の雑誌)

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