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2007年7月25日 (水)

44冊目 『永遠の出口』

朝の通勤時、早朝のラジオ体操を終えた子どもたちが駆け回っているのを見て、あぁ夏が来たんだなと感じている今日この頃。子どもたちのはしゃぎ声を聞きながら、今では昔ほどワクワクしなくなってしまった7・8月をちょっと寂しく思いながら過ごしています。

少しずつ遠ざかっていく小学校、中学校、高校の頃の記憶。今となっては何でもないようなこと、学校のプリントを失くして泣きながら探したり、水着を持って行くのを忘れて一人ポツンとプールサイドで見学したり、その頃はその頃で大変だったっけなぁ。記憶の片隅で埃を被っていたそんな苦さを思い出させてくれたのが今回紹介する、

『永遠の出口』 森絵都 2006.2 集英社(集英社文庫)

永遠の出口』 森絵都 2006.2 集英社(集英社文庫)

です。物語は、紀子が小学三年生だった頃のことから語られ始めます。彼女の生きる時間は私たちと同じように進んでいき、紀子が高校を卒業していくまでに歩んできた道のりを、読み手である私たちは一緒に過ごすことが出来ます。

小学生の「紀ちゃん」は、いつしか「ノリ」に、やがて「岸本」と苗字で呼ばれるようになっていくのですが、そういえば自分も幼馴染とは今でもお互いに名前のちゃん付けで呼び合っているなぁと、そういうところがちゃんと描かれているなぁと思いました。

物語は紀子の過ごした人生の節目ごとに章立てされていて、

第一章 永遠の出口

第二章 黒い魔法とコッペパン

第三章 春のあなぽこ

第四章 DREAD RED WINE

第五章 遠い瞳

第六章 時の雨

第七章 放課後の巣

第八章 恋

第九章 卒業

エピローグ

となっています。

小学生の頃は中学生が、中学生の頃は高校生がずいぶん大人に見えたものでした。今となっては年々高校生を若いなぁと思うようになってきていますが、紀子の人生を共に歩みながらそこに重ねるように、自分にも確かにあった様々な日常の風景を少しずつ思い出しながら頁を捲っていきました。

お小遣いの使い道や誕生会をめぐっての友達との不協和音が悩みの種だった紀ちゃん、そんな彼女も成長するにしたがって、家族との関係、恋愛、進路という青春真っ只中の悩みの嵐の中に突入していきます。紀子という一人の女の子の成長を通して描かれているのは、紛れもなく私たち一人ひとりがかつて通ってきた人生そのものです。だから紀子の悩みはかつての自分の悩みであり、いろんなことがあって少しは分かるようになったかなという人生の機微をこの物語を通して感じることが出来たのだと思います。

読後、不思議とすごくいい気分でした。あぁ、いろいろあったけど、だからこそ今の自分があるんだと肯定的に感じられたからかもしれません。物語の終わりを迎えるにあたり、頭の中で「母上様、お元気ですか~♪」のメロディーが流れ続けたのには、作者の森さんにやられてしまいました。素晴らしい演出です。

う~ん、この物語には何度も唸らされて、森絵都さんのすごさを感じざるを得ませんでした。これからたくさんの人に自信をもって薦めたいなと思います。素晴らしい作品でした。個人的にはいきなり第一章の終盤で心を締め付けられ…すっかりやられてしまいました。

◎関連リンク◎

永遠の出口(集英社)

今月の新刊採点 永遠の出口(WEB本の雑誌)

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