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2007年8月25日 (土)

50冊目 『暗いところで待ち合わせ』

連日の酷暑の中、爽やかな旋風を巻き起こしてくれていた夏の高校野球も劇的にその幕を閉じ、日が落ちるころには少しずつ秋の訪れを感じるようになってきた今日この頃。

夏の読書を楽しんだその後は読書の秋だなぁ、などと考えながら今回私が手にしたのは、

『暗いところで待ち合わせ』 乙一 2002.4 幻冬舎(幻冬舎文庫)

暗いところで待ち合わせ』 乙一 2002.4 幻冬舎(幻冬舎文庫)

という本でした。

その表紙からして、一見するとホラー作品のように思えてしまう本書ですが、いやいやいや、それは違います。事故をきっかけに視力を失ってしまったミチルと、ある事件の犯人として追われているアキヒロ、この二人の視点から物語は紡がれていきます。

一人ひっそりと暮らすミチルの家に逃げ込んだアキヒロは、自分がそこにいることがミチルに気づかれないようにじっとその身を潜めています。一方でミチルは家の中に感じるようになった「何か」の気配に不安を感じながらも、気づいてしまったことを悟られないように、何事もないように装いながら、相手がこれからどう出てくるのかを静かに伺っています。

二人の不思議な同居生活は、やがてお互いの心を近づけてゆくことになり、アキヒロが追われている事件の真相やミチルの家に逃げ込んだことが単なる思いつきではなかったことなどが少しずつ明らかになっていきます。

昔どこかで聞いた話ですが、横断歩道を渡るお年寄りがいたとき、外国では一緒に渡りましょうと声をかけるのが思いやりで、日本人は後ろからちゃんと渡れるか見守っていて、何かが起こったらすぐに駆けつけるというのが思いやりであるという話でした。

物語に戻って、何の関わりもなかったはずの二人でしたが、アキヒロはミチルの生活を結果として覗き見てしまっているうちに、ミチルを「思う」ようになり、ミチルも見守られていることに安心を覚えるようになっていきます。しかし、お互いの存在を確かめ合うことが、今の微妙なバランスの上に成り立っている奇妙な同居生活を壊してしまうのではないかという思いが、二人をちゃんと近づけさせようとしないのです。触れ合うことなく、お互いの存在を感じあう二人の生活に、何ともいえない心地よさを私は感じました。

終盤に向けて明らかになっていく物語の真相についても、最後まで読者を飽きさせなかったと思いました。最後にアキヒロとミチルはどのような関係を選ぶことになったのか、是非手にとって確かめて頂きたいと思います。物語を覆う、仄暗さと静謐さ、そして寂しさと切なさが大変素晴らしい作品でした。

◎関連リンク◎

暗いところで待ち合わせ(幻冬舎)

はっちの太鼓本 太鼓本だ~♪どどんがどんっ!

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» 感想:乙一「暗いところで待ち合わせ」 [逆さメガネで覗く世界 -don't think, feel-]
乙一乙一だいぶ読みましたよ 評価:★★★★☆(70/100) 書名:暗いところで待ち合わせ 著者:乙一 内容:書いてもいいんですが この作品は書かないほうがいい気がしますので書きません 読んでみて感じてください 先入観なく読んだ方が面白くよめると思います 感..... [続きを読む]

受信: 2007年9月13日 (木) 00:16

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