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2007年9月17日 (月)

52冊目 『こさめちゃん』

数ある漫画の中で、今私が一番読みたい作品を書いている漫画家、それは小田扉さんです。以前、ここで小田さんの『団地ともお』を紹介しましたが、他にも作品が出ているので、また機会があれば感想などを書き残したいなと思います。さて、それらの作品のなかで今回私が手にしたのは、

『こさめちゃん』 小田扉 2001.3 講談社

こさめちゃん』 小田扉 2001.3 講談社

という作品です。『こさめちゃん』は小田さんにとって初の単行本で、表題作の「こさめちゃん」をはじめ、それまで未発表だったものも含めた作品集となっています。

私は自分がなぜ小田さんの作品に惹かれるのかをちょっと考えてみました。一つは言葉を豊かに、そしてとってもゆるく使っているということ。学校で先生が「わかるしとー」と言っていたり、チャイムが「リンゴーン」と鳴っていたり、学生が「テレンコテレンコ」と歩いていたり、そんな一つひとつが重なり合って出来ていく作品はキッチキチにならず、なんともいえぬゆるさが味わいとなって表れているように思えます。

もう一つは、そんなゆるさを持ちながら、所々に挟み込まれる主張しない暗さや闇の存在。小田さんの作品に出てくる暗さや負の感情は、すいかに塩をふるようなもので、それがあるからこそ作品に時としてとてつもない深さが生まれているのではないかと思ってみたりします。その暗さが読者に一緒に暗くなろうと押し付けられることなく、作品中に自然に挿入されていることはすごいことだと感じます。作品によって、細かな描写がされているもの、ゆる~い線で描かれているものがあり、その振り幅の広さも作品の大きな魅力です。

表題作の「こさめちゃん」ではこさめちゃんを取り巻く暗さとは対照的に、巡りめぐって「ぼく」と再会できたときの笑顔がこの作品のすべてを表しているように思えました。作品中、メインディッシュとされている「話田家」全6話についても、様々な暗い事情が挟み込まれているにも関わらず、やっぱり素敵です。細かいですが、79ページの「お友達も」「あどうも」というコマで、友達の見せた笑顔が、あぁ現実でもこんな場面あるだろうなと思って、これを普通に描けるのはすごいなぁと思いました。

とにかく一度「気づいて」しまうと、作品の細かいところまですごく書き込まれていることに驚かされます。今後、どんな作品が発表されていくのかがとても楽しみです。

◎関連リンク◎

30冊目 『団地ともお』(2007年1月15日)

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