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2009年8月16日 (日)

71冊目 『片眼の猿』

今更なのですが、いろんな作家さんがいて、各々の文体で様々な世界を紡いでいるってすごいことですよね。まだ読んだことがない作家さんの本を読んでみて、新たな世界観や独特の文体に出会えると本当に嬉しくなります。

今回私が手にしたのは、今年の新潮文庫の夏のフェアにも選ばれていた、

『片眼の猿』 道尾秀介 2009.7 新潮社(新潮文庫)

片眼の猿』 道尾秀介 2009.7 新潮社(新潮文庫)

という本です。

道尾さんの『鬼の跫音』という作品の評判を耳にしたことがあり、一度読んでみたい作家さんだったので、文庫が出たばかりのこの作品を手にしました。(このパターンばっかりですね。読みたい作家さんの最初の作品は、ほぼ文庫から入場しています。)

俺の経営する盗聴専門の探偵事務所『ファントム』に谷口楽器が仕事を依頼してきたのは、いまから一ヶ月ほど前のことだった。依頼主である谷口楽器社長、谷口勲とともに、この刈田が俺の事務所にやってきた。

――ライバルメーカーの黒井楽器が、我が社の楽器デザインを盗用している疑いがある。きみに、その証拠を見つけてもらいたい――(P24)

探偵・三梨幸一郎は盗聴のプロであり、それは彼の特殊な耳によってもたらされた能力でした。黒井楽器に対する調査を行う中で、三梨はある女の話を偶然耳にします。いつも通勤電車の中でサングラスをかけていて、ある時、何百キロも離れた航空機の墜落事故を電車の窓越しに見たという女。三梨は、この機会を逃す手はないと、その女をスカウトしようと試みます。それが『ファントム』で一緒に働くことになった冬絵でした。

冬絵という心強い仲間を得て、黒井楽器への調査を続けていた三梨でしたが、ある事件が起き、それは結果的に冬絵に対する疑惑へとつながっていきます。三梨が背負ってきた自らの身体的特徴、今も心に傷を残している7年前の事件、そして冬絵の行動の裏にあった彼女の過去とは。

本書には三梨と冬絵以外にも、三梨が『ファントム』の事務所兼住居としている202号室がある、「ローズ・フラット」という二階建てのぼろアパートの個性的な住人たちが出てきます。野原の爺さん、まき子婆さん、トウミ・マイミの双子の姉妹、帆坂くん、そしてトウヘイ。癖のある登場人物が揃っているなと思っていたら、なるほど、うむうむ。

個人的にはあんまりミステリーは読まないんで本格的な感想も言えないんですが、事件そのものよりもそこに集った人物たちに焦点が当てられたストーリーだったと思います。三梨はいわゆるハードボイルドな探偵として、自分自身の謎も抱えつつ事件と向き合っているという、いい存在感がありました。作中の各所に埋め込まれた事件と登場人物に関する伏線に対する物語のラストでの回答については、自分が頭の中に作っていたいろんな想像が違っていたことに素直に驚かされました。

これだけ濃い登場人物が描かれていたのでシリーズ化も出来そうですが、伏線が回収されちゃってたら続編って難しいんですかね。『鬼の跫音』も読んでみたいのですが、表紙からしてちょっと怖そうなので、こちらも文庫化されるまで待ってみることにします。

「なあ、猿がつぶした右眼は、何だったと思う?」(P275)

◎関連リンク◎

片眼の猿―One-eyed monkeys―(新潮社)

道尾秀介@あらびき双生児

・『鬼の跫音』 道尾秀介 2009.1 角川グループパブリッシング

・『向日葵の咲かない夏』 道尾秀介 2008.7 新潮社(新潮文庫)

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