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2009年9月13日 (日)

74冊目 『ダブ(エ)ストン街道』

子どもから大人になるにつれて、変わっていくとよく言われるのが「味覚」ですが、私の場合、味覚だけでなく、行動するときの感覚がだいぶ変わってしまったなとつくづく思います。

子どもの頃は結構情報を集めて、きっちり計画を立てて行動していたのですが、もはや今では、完全に感覚的に行動しています。大まかな時間と大まかな方向で動く、それが心地いいのですが、やはり失敗も多々あります。

そんな私が手にしたのは、秋の再読本第二弾、

『ダブ(エ)ストン街道』 浅暮三文 2003.10 講談社(講談社文庫)

ダブ(エ)ストン街道』 浅暮三文 2003.10 講談社(講談社文庫)

という本です。以前ここでも紹介した『実験小説 ぬ』の作者による作品ということで、この本を知り読んだのですが、これは私にとってはかなりツボの作品でして、ずっと紹介できないのが残念だったので、今回再読した次第です。

目次を見ると、

第一章 目覚めよと呼ぶ声す

第二章 愛しい君の手紙に見入って

第三章 入場

第四章 悲しみは多くの人の心を捉える

第五章 パノラマ

第六章 春の声

第七章 大地礼賛

第八章 終曲

双六式浅暮三文ができるまで

となっています。

ヨーロッパ中を旅する流しの考古学者・ケン(吉田健二)は、ドイツのハンブルクで出会った恋人のタニアと暮らしていました。が、タニアには強度の夢遊癖があり、ある日眠っている間にいなくなってしまったのです。ケンは、タニアから届いたハガキを手掛かりに、彼女を探す旅に出ます。そのハガキにはタニアが「ダブエストン」で待っていることが記されていました。

『ダブ(エ)ストンなる大島は世界の神秘なり。近隣の諸島で原住民は不可能なることをかく語る。「ダブ(エ)ストン街道を曲がる」と。また、もしくはあり得ないことをかく語る。「ダブ(エ)ストン街道から抜ける」と。

いずれもまじないの如き、戯言なりしが、しかし余はダブ(エ)ストンに漂着して、その言葉の正しきことを実感せり。まさしく、迷うべくして迷う者が到るところ、そもダブ(エ)ストンなり。そして余は発見せり』(P13-14 未完の『赤道大全』より)

なんとかダブ(エ)ストンと思われる島に辿り着いたケンでしたが、タニアに到る手掛かりがありません。洞窟を抜け、森に出たケンは郵便屋のアップルと出会い、お互いの目的を果たすために、二人で助け合いながら旅を続けます。

ダブ(エ)ストンでは、誰もが道に迷っています。ケン達は都であるドサイを目指すことにしますが、どちらに進めばよいかの判断も容易ではありません。道中、ドサイを目指して二年以上走り続けている駅伝の集団や、流しのブラスバンドに出会います。

一方その頃、ダブ(エ)ストンでは、同じように「王様」の一行があてもなく前進し続け、ダブ(エ)ストンから少し離れた洋上では、海賊船の中で幽霊となった乗組員が行く先を巡って揉めています。

ケンとアップルはその道中、出会いと別れを繰り返し、またアクシデントにも襲われ、ケンの命も危うい状況に陥ります。果たして、ケンはもうタニアに会うことが出来ないのでしょうか。

しかし、ダブ(エ)ストンで彷徨い続けるそれぞれの人生(人じゃないのもたくさん)が交差するとき、次々と道が開けていきます。そしてついにはダブ(エ)ストンで怖れられている「赤い影」の秘密が明らかになり、ケンは真実に気づくとともに、その事実を受け入れなければならない状況に置かれます。果たしてケンの旅は、どこへ向かうのか。

この作品は、正直好みが分かれるかもしれませんが、私は大好きです。こうやって迷いながら成り立っている土地も、また真実なのかも知れないと感じるほど、このダブ(エ)ストンの世界が好きになりました。悲しむべきは、今、本書が手に入りづらくなっていることです。

もしも手にとる機会があれば読んでみてください。そしてこの迷いの世界にはまってしまった方がいたら、

是非ここで待ち合わせしましょう!

彼等がいつまでも、迷い、つまずき、だまされ続ける旅を進んでいることを私は祈りたい。目的地は見果てぬ夢だからこそ輝くのだ。だからこそ流れていくのだ、流されるのではなく。放浪こそが安らかな休息なのだ。(P307)

◎関連リンク◎

ダブ(エ)ストン街道(講談社)

GURE GROOVE

「ダブ(エ)ストン街道」文庫化に寄せて 浅暮三文(ビーケーワン)

26冊目 『実験小説ぬ』(2006年12月4日)

はっちの太鼓本 太鼓本だ~♪どどんがどんっ!

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