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2009年10月12日 (月)

80冊目 『さよならのポスト』

手紙はやっぱりいいですね。手書きの字に思いが込められるのがいいなと思います。それがメールと違って、形として残るのが幸か不幸かは受け取り手次第かもしれませんが。自分はやっぱりアナログで生きていこうと思います。

さて今回私が紹介するのは、読みたかったけれどずっと本棚で寝かしていた、

『さよならのポスト』 稲葉真弓 2005.8 平凡社

さよならのポスト』 稲葉真弓 2005.8 平凡社

という作品です。私はポストのある風景が好きなので、まずタイトルの「ポスト」と装画の緑色のポストに惹かれました。

正面に緑色のポストが立っている、ちいさな郵便局がありました。いつからかそこには、「さよならのお話」だけが届くのです。そう、あの「さよなら」です。だれかがだれかに別れを告げる特別な言葉。「元気でね」とか「またね」とか、「君に会いたいよ」とか伝える、あの言葉です。(P6)

もくじを見ると、

だれもいない森

星になったライオン

おばあさんの水晶

ネムのはなし

まてんろう

火山の町

昨日のわたし

夏の魔女

最後のあいさつ

という短編によって構成されていて、これらのお話を郵便局員さんが一つずつ紹介してくれながら、物語は語られていきます。

それぞれのタイトルにも見て取れますが、ひらがなが多く、また字も少し大きめで、子ども向けかな?と最初は感じましたが、「さよなら」の物語というだけあって、お話が終わるころには何とも言えない淋しさが募ってしまって、この感覚が分かるのはある程度の感受性が育ってからだろうなと思いました。

ポストに届く手紙は、人間のものもありますが、動物や自然そのものからも届きます。だから誰かに手紙を書いたものというよりも、さよならを告げなければならない気持ちが、手紙という形になって届いたものと受け取るほうが自然かもしれません。

「だれもいない森」は、仲間たちが去って行った森に今もさびしく残っているふくろうの物語です。ふくろうはあまりにもさびしくて、手紙を書こうと思いつくのですが…、どうしても文字を思い出せないのです。文字を思い出せないと手紙を出すこともできません。これは自分だったら相当堪えるだろうと思います。どうやって遠くに気持ちを伝えることが出来るのか…。待つしかないのでしょうか。

「昨日のわたし」は、明日が嫌いな女の子の物語。みんなが明日を楽しみにする中、女の子だけは明日なんか来なければいいと言います。でも夏休み、公園で一緒に遊んだ少し変わった女の子との出会いによって、女の子の「明日」への気持ちに変化が起こります。

読み手によって、この物語たちを「寓話」と捉える人もいるでしょうし、素直に「さよなら」の物語と捉える人もいるかと思います。

この物語たちには、「さよなら」を受け止めてくれる、大切な役割がある「さよならのお話の番人」である郵便局員さんがいるので、いろんな思いがある中で、安心して「さよなら」を伝えることが出来るのでしょう。

そして、そんな郵便局員さんにも等しく「さよなら」はやってきます。ときにはこんな、ちょっと切なくなる、さびしくなる読書というのもいいものだなと思いました。

さよならのポスト

「さよなら」を言うことは、新しい世界と時間への出発なんだよ。(P126)

◎関連リンク◎

さよならのポスト(平凡社)

ポストマップ

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