« 93冊目 『聲の形』 | トップページ | 復帰!! »

2015年1月25日 (日)

94冊目 『鹿の王 上・下』

まだまだ寒い季節が続きますが、みなさんお元気でしょうか。体調を崩されないよう、ご自愛ください。

今回私が紹介するのは、

『鹿の王 上』 上橋菜穂子 2014.9 角川書店 『鹿の王 下』 上橋菜穂子 2014.9 角川書店

鹿の王』 上橋菜穂子 2014.9 角川書店

という本です。上橋さんの本は、これまで『守り人・旅人』シリーズ、『獣の奏者』などを読んでおり、とても好きな作家さんです。

本作は上橋さんの最新の長編作ということで、すごく気になっていたので、文庫化を待たず、購入して読みました。

上橋さんの世界観はいつも緻密なほどに考え抜かれていてわくわくするのですが、本作の舞台となった世界も、人が実際にそこで根付いて生活しているのが感じられるものでした。

主人公のヴァンは、戦いに敗れ、東乎瑠(ツオル)帝国の奴隷として、過酷な地・岩塩鉱に囚われの身となっていました。周りで力尽きていく人々がいる中で、自身も徐々に弱っていくヴァンでしたが、ある日、岩塩鉱が黒い獣たちの襲撃を受けます。命を落とす奴隷たちの中で、何故か生き残ったヴァンは、もう一人生き残っていた幼子と一緒に岩塩鉱から逃亡することに成功します。

その頃、もう一人の主人公、医術師のホッサルは、岩塩鉱でおきた奴隷たちの集団死亡の調査の為、岩塩鉱にやってきます。そして、そこで、かつて国を滅ぼしたとされる恐ろしい伝説の病の痕跡を見つけ、唯一助かったと思われるヴァンを探すよう指示が出されることになります。

本作では、人間と病との戦いが物語の核となっており、人の命を、いや国を伝染病から救うために、どのように人間が病と向き合うかが詳しく書かれています。そのため、医療の分野で、現実にも行われているであろう製薬の方法や、病と向き合う医術師たちの奮闘の場面が多く描かれています。

それと並行して、伝説の病のカギを握ると思われるヴァンの逃避行も描かれていますが、さすが著者の上橋さんのこれまでの作品と同様、緊迫した場面や、人々との出会い、喜びや葛藤などの人間の心理描写が素晴らしく、読み手のこころが鷲掴みにされるようでした。

強大な帝国がその所領を増やさんと侵略する世界、侵略する側と侵略される側の思惑と悲嘆、病に命を落とすものと、生き残った者、そして命と向き合う医術と、古くからの信仰との背反など、いくつもの対立の構図が物語に凝縮されています。

タイトルの「鹿の王」については、後半で明らかになってきますが、その含意は読者に委ねられていると思います。

命の重さと天秤にかけられた、人々の思惑、裏で糸を引いている政治など、最後まで読者を飽きさせない物語でした。独特の物の名前を少しづつ覚えながら、鹿の王の世界に入って、じっくり味わってほしいなと思う作品でした。

私たちは、ひとりひとり、違うのよ。たしかに祖先から綿々と伝わってきたものはある。でもね、ひとりひとり、まったく違うの。どの命も、これまでこの世に生まれたことのない、ただひとつの、一回きりの個性をもった命なのよ。(下P303)

◎関連リンク◎

『鹿の王』上橋菜穂子 うえはし なほこ(角川書店)

|

« 93冊目 『聲の形』 | トップページ | 復帰!! »

小説・物語」カテゴリの記事

医療・健康・保険」カテゴリの記事

コメント

はっちさん、ブログ再開おめでとうございます
はっちさんに教わった上橋さんの作品、とてもとても面白くて、一気に読んでしまいます。

守り人シリーズ、獣の奏者、そして鹿の王…

ファンタジーなのに現実的で、
食べ物の匂いや味、
争いの痛みや血なまぐささ、
政治の駆け引きと人間の思想、

俯瞰して読んでいるようで、
上橋さんの物語の特徴ともいえる
複数の主人公(?)中心人物(?)
にいつの間にか寄り添っていると思いきや、
いつの間にかその登場人物が好きになっているという…

きっと上橋さんが愛をこめて育てあげた人物なんでしょうね。

もはや物語中だけの人物ではないような感じがします。
守り人のバルサを綾瀬はるかが演じる撮影が進んでいるようですね。

果たして実写化がどんな仕上がりになるか、楽しみです。

はっちさん、健康には一番留意して、
はっちさんの世界・人生を歩んでください。
応援してます~

投稿: おじさまおーじさま | 2015年1月28日 (水) 19:58

おーじさま、コメントありがとうございます!!
上橋さんの作品では、やっぱり守り人・旅人シリーズが一番好きかな(*'▽')

お互い年を重ねてきて、健康には気をつけていこうね(`・ω・´)
実写化わくわく♪

これからも、いい本との出会いを重ねて紹介していきたいです!
引き出しの「取っ手」をいっぱいためるぞ~~~w

投稿: 朔風はっち | 2015年1月29日 (木) 00:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 94冊目 『鹿の王 上・下』:

« 93冊目 『聲の形』 | トップページ | 復帰!! »