カテゴリー「写真集」の5件の記事

2009年10月 4日 (日)

78冊目 『うめ版』

辞書・辞典の世界では電子辞書の発展と普及が目覚ましいようですが、私はアナログで紙をペラペラと手繰るのが好きなので、紙の辞書はまだまだ手放せません。

教育現場、特に小学校においては辞書を引くことの効用に注目が集まっているとも聞きます。辞書と一口に言ってもその目的に応じて、出版社もカテゴリもたくさんの種類がありますが、この本は誰のための辞書として、どこに分類されるのでしょうか。今回私が手にしたのは、

『うめ版』 新明解国語辞典×梅佳代 2007.7 三省堂

うめ版』 新明解国語辞典×梅佳代 2007.7 三省堂

という本です。

新明解国語辞典といえば、辞書好きには有名な、国語辞典でも異彩を放つ個性の強い辞典。そして梅佳代さんといえば、『うめめ』や『男子』などの写真集が注目された、新進の若手写真家。この異彩の辞典と話題の写真家のコラボレーション作品が、『うめ版』です。

『うめ版』 新明解国語辞典×梅佳代

で、どのように構成されているかというと、見出しとなる「ことば」に対して、右のページに新明解の解説書きがあり、左のページにその「ことば」を想起させるような写真が載せられています。

シンプルに言うとそれだけなのですが、ページを捲っていくとこれがなかなか深いんです。新明解のことばの解説だけでも従来味があるものだったのですが、これまた味のある梅佳代さんの写真が添えられたことで、ぐっと迫ってくるものがあります。

やはりことばをことばで説明するということには限界があるのかもしれないということと、どんなに巧く工夫しても「ことばに出来ないものがある」ということ。それを梅佳代さんの写真が見事な表現として、ことば以上にそのことばを言い表しているというところでしょうか。

こうして見ていると、梅佳代さんの写真集『男子』こそ、まさに「男子」ということばを、ことばを用いることなく表現した、本書の先駆けともいえる存在であったんだなと感じました。

個人的には、「生一本」や「ライバル」、「分からず屋」といった項目が特に好きでした。梅佳代さんの作品には必ずといっていいほど、人物か動物が写っていて、いい顔だけでは表せない人間のいろいろな複雑な表情が見れて、本当に大好きです。

個性の強い新明解だからこそ、梅佳代さんの生命力の強い写真たちとがっぷり四つに組んで渡りあえている気がしました。この作品をヒントに、たくさんの人がその写真をある「ことば」に見立てる、名づけてみるのも面白いだろうなと思いました。

「わたし版」の作品が出来たら楽しいでしょうね。そんなことを感じたインパクトの強い、ことばの写真集でした。

◎関連リンク◎

うめ版 新明解国語辞典×梅佳代(三省堂)

『三省堂 新刊 NEWS』号外 うめ版 新明解国語辞典×梅佳代(三省堂)

新明解国語辞典第六版(三省堂辞書サイト)

うめかよ参上!(ほぼ日刊イトイ新聞)

・『うめめ』 梅佳代 2006.9 リトルモア

・『男子』 梅佳代 2007.7 リトルモア

・『じいちゃんさま』 梅佳代 2008.7 リトルモア

・『新明解国語辞典 第6版 並版』 2004.11 三省堂

・『新解さんの読み方』 夏石鈴子 2003.11 角川書店(角川文庫)

・『新解さんリターンズ』 夏石鈴子 2005.9 角川書店(角川文庫)

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2007年8月16日 (木)

49冊目 『大人の写真。子供の写真。』

今日は京都・五山送り火の日。勤め先は送り火を見るには絶好の場所にあり、実は送り火とも深い関わりのある場所なのですが、毎年送り火の日は早めの消灯が決まっているらしく、残業も早々に切り上げて帰宅して、ついさっきまで折角そこにいたのに、何故かNHKの中継で送り火を見ました(笑)

そんなこんなで、どんなもんだですが、今日紹介するのは冒頭文となんの関係もない、

『大人の写真。子供の写真。』 新倉万造×中田燦 2006.5 枻出版社(枻文庫)

大人の写真。子供の写真。』 新倉万造×中田燦 2006.5 枻出版社(枻文庫)

という本です。

写真家として、普通の人生よりも多くの国を訪れ、普通の人生よりも多くの人に出会い、普通の人生よりも多くの経験を積んだ。

しかし、その幸運な人生の代償として、何より大切だったはずの、単純な驚きや無垢な感動を忘れてしまったのではないだろうか。

そんなことに気づいてしまった大人は、ある日、年の離れた親友を誘って、カメラ片手に街へ出た。

大人の名前は新倉万造、53歳。

親友の名前は中田燦、6歳。(本書冒頭より)

市場や町の風景、動物や大自然を前にしたとき、大人と子どもがそこに見ているものの違いをユーモアたっぷりの一言とともに並べたユニークな本です。

とにかく写真家と子どもが共にカメラを持って、同じ風景の前に対峙するという発想が非常に面白く、実際に二人が撮った写真を見比べていくとなんともいえない面白さがあることに気づかされます。

万造さんはやはりプロなのですごくいい写真を撮られています。それに対して燦ちゃんは、構図よりも撮りたいように撮っているなという、のびやかさが感じられ、それが時に思いもよらない味わいとなって現れているように思えました。

それぞれの写真が個別に並べられていたらそこまで面白かったかどうか分かりませんが、今そこに二人は同じものを前にしているけれど見ている風景は確実に違うんだと、二人の写真がうまく並べられていることで気づかされることも多く、非常に面白かったです。写真ってやっぱりいいですね~。

時に写真につっこみ、時にユーモアを交えた解説をされているのは燦ちゃんのお父さん。こちらもなかなかいい味出てましたよ。

◎関連リンク◎

大人の写真。子供の写真。(sideriver)

枻出版社

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2007年7月31日 (火)

46冊目 『いつものおむすび100』

同僚と、おふくろの味について話していたときのこと。私が母親の作ってくれるからあげが一番美味しかったなぁと言うと、故郷の九州を離れ今は遠い関西の地に住む彼はこう言ったのでした。

『塩で握ったおむすびに海苔を巻いて、ちょっと時間を置いて、しなっとしたのが一番うまかばい。』

そうそう、遠足や運動会のときのお弁当にはおむすびが必ず入っていて、そういえば少し湿った海苔の具合がたまらなく美味しかったなぁと、しみじみ思ってしまいました。そんなわけで、彼は海苔がパリッとしたコンビニのおむすびをどうも食べる気にならないそうです。私はあのパリッとした具合のも好きなのですが。そんなおむすび話で盛り上がっていた私たちにぴったりだったのが今回紹介する、

『いつものおむすび100』 飛田和緒 2004.1 幻冬舎

いつものおむすび100』 飛田和緒 2004.1 幻冬舎

という本です。本を開くと、実物大の美味しそうなおむすびが次々と現れます。頁の真ん中にで~んとおむすびの写真があり、その下には具の写真、そして材料と作り方が載っています。おむすびはその種類によって5つに分類されていて、それぞれ、

おかずおむすび

野菜おむすび

漬け物おむすび

薬味おむすび

炊き込みおむすび

となっています。とにかく美味しそうなおむすびの連続で、見ているだけでお腹がなってきます。今風のおむすびに負けじと、梅干や塩のおむすびも存分にその魅力を輝かせていました。

私は実家でよく食べた、大根の葉とちりめんじゃこを炒めたものをご飯と混ぜて、韓国のりで巻いたおむすびが一番好きです。いやぁ、おむすびもなかなか深いものだなと感心しながら、相変わらずお腹をならせて今日も頁を捲っています。

にぎりたてのおむすびはあったかい。

手のぬくもりがいっぱいに詰まっています。

そしてなぜだかわからないけどおむすびを食べると

じんわり元気が出てきます。(P3)

◎関連リンク◎

いつものおむすび100(幻冬舎)

・『毎日のみそ汁100』 飛田和緒 2003.5 幻冬舎

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2006年1月24日 (火)

3冊目 『雨の名前』

2冊目に紹介した『風の名前』とセットで置かれていたのが、今回紹介する本です。

『雨の名前』 高橋順子 2001.6 小学館

雨の名前』 高橋順子 2001.6 小学館

こちらの方が先に出版されていたようですが、個人的には「風」の方に先に興味が湧き、う~ん、しかし「雨」も魅力的ではあるなぁと結局2冊とも借りてきました。

昨年は空梅雨、一昨年は集中豪雨と、自然の力は時として人間の脅威とも、また大きな恵みともなりますが、雨や風への名付けをこうして眺めていると、古来、日本人は、その地理的要因に支えられた風土の中で、時に自然を敬い、畏れ、愛で、四季折々の変化に驚くほど繊細に応じてきたのだなぁと改めて思いました。

・「草の雨:くさのあめ」(春の雨) 山野に萌える草たちに烟るように降りそそぐ春の雨。このころの心躍る野歩きを「踏青(とうせい)」という。文字どおり青草を踏む。

・「万物生:ばんぶつしょう」(春の雨) 春の雨をいう。生きとし生けるものに新たな生命力を与えるということだろう。

・「青時雨:あおしぐれ」(夏の雨) 冬の季語である「時雨」に、青葉の「青」を付して、初夏の表情をだした言葉。青葉、若葉が目にしみるこの季節、その瑞々しい葉っぱからしたたり落ちるしずくを、時雨に見立てた風情のある言葉。

・「銀箭:ぎんせん」(夏の雨) 「箭」は矢のこと。夕立の雨脚を光る銀の矢に見立てたのである。

・「瞋怒雨:しんどう」(夏の雨) 「瞋怒」は目をむいて怒ることで、烈しい雷鳴を轟かせながら降る豪雨のこと。中国の言葉。

・「秋黴雨:あきついり」(秋の雨) 秋の長雨。(「黴」はカビ)

・「肘笠雨:ひじがさあめ」(季知らずの雨) にわか雨。急に降りだしてしまい、笠の用意もなく、あるいは笠をかぶるひまもなく、肘を頭上にあげて、袖を笠の代わりにすることから名付けられた風流な名。「ひじあめ」ともいう。

特定の「時」に限定された、雨の名付けもあります。

・「洒涙雨:さいるいう」(夏の雨) 陰暦七月七日の七夕の日に降る雨のこと。牽牛と織姫が逢瀬の後に流す惜別の涙とも、あるいは逢瀬がかなわなかった哀しみの雨ともいう。

・「鬼洗い:おにあらい」(冬の雨) 大晦日に降る雨のことで、「鬼やらい=追儺(ついな)」にあやかってのものか。

・「御降り:おさがり」(冬の雨) 元日、または三が日の間に降る雨や雪のこと。新年早々に降るこの雨は、農家にとってはその年の豊穣につながり、ありがたいものであった。「富正月」ともいう。

・「騎月雨:きげつう」(季知らずの雨) 「騎月」は月越しの意。月をまたぐ雨。

さて、最後にもう一つ。

・「じぼたら雨」(季知らずの雨) 和歌山市で、じめじめと降り止まない雨。

和歌山市で3年半暮らしましたが、初耳です。ちょっと嬉しくなりました。

『風の名前』も良かったですが、この『雨の名前』も負けず劣らず、その素敵なエッセーと雨の風景写真が、「雨」の世界を豊かに彩っていました。雨の匂いが美しく香る、そんな本です。

◎関連リンク◎

雨の名前(小学館)

高橋順子 四季の雨暦(コスモ石油)

・『花の名前』 高橋順子 2005.4 小学館

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2006年1月22日 (日)

2冊目 『風の名前』

私の中・高生時代の夢は、「気象予報士」になることでした。お天気おじさんとして親しまれ、昨年亡くなられた福井敏雄さんに憧れ、高校に入学してからは自分で気象関係の本を買い込み、一時はその方向に進学することを考えていたこともありました。そんな訳で、今でも空を見上げては雲の流れをじっと眺めたりするのが好きで、気象には関心が高いです。

さて、今回紹介するのは、

『風の名前』 高橋順子 2002.5 小学館

風の名前』 高橋順子 2002.5 小学館

という本です。この本も図書館をぶらりと歩き回っているなかで見つけ、手に取って頁をペラペラっとめくり、借りることにしました。

この本は、高橋順子さんの風に関する知識の紹介・エッセーと、佐藤秀明さんが風を探す旅の中で撮った、美しい風景の写真で構成されているのですが、読み進むというよりは、頁をめくることで四季折々の風が豊かに感じられて、自分が知らなかった様々な風に思いを馳せることが出来ました。

四季の風として、春の風・夏の風・秋の風・冬の風、そして加えて季(とき)知らずの風と、5つの大きなテーマに分かれていて、聞いたことのあるものから、日本各地にその名を残すものまで、様々な風が収録されています。私は薫風が好きで、その季節になると意地でも文章中に入れてしまうのですが、この本を通じて新たに、心に残るたくさんの風に出会えました。

・「凱風:がいふう」(春の風) 「凱」はやわらぐの意で、南から吹き寄せる暖かく、快い風のこと。

・「花信風:かしんふう」(春の風) 早春から初夏にかけて、花の季節到来を告げるように吹くやさしい風。

・「青嵐:あおあらし」(夏の風) 「青嵐(せいらん)」の訓読。初夏の青葉をひるがえし、吹き渡る快い風。

・「秋の声:あきのこえ」(秋の風) もの寂しく、秋の詩情や情緒を感じさせる風をいう。

・「泰風:たいふう」(季知らずの風) 「泰」は、やすらか、ゆたか、ゆるやか、大きい、なめらか、といった意。西風。西風は物を豊かに成熟させることからいう。

『台風は、平安時代から「野分(のわき)」と呼ばれていたが、明治になり、英語の「タイフーン」の訳語である「颱風(たいふう)」と表記されるようになった』、という話は聞いたことがありましたが、これまで聞いたことがなかった面白いものを見つけました。

「風炎」

さて、これはなんのことでしょうか。本にはこうありました。

・「風炎:ふうえん」(春の風) ドイツ語フェーンへの当て字で、山から吹き下りてくる乾燥した暖かい風のこと。

当て字とはいえ、なかなかうまいなぁと感心してしまいました。

今冬は何十年に一度の厳しい寒さと言われ、吹き付ける風に身を縮める毎日ですが、そんな厳しい風にも、また優しい風にも、もし名前が付いていたら、また違ったものに感じられるのかもしれませんね。

◎関連リンク◎

風の名前(小学館)

・『風の事典』 関口武 1985.2 原書房

・『木枯の酒倉から・風博士』 坂口安吾 1993.2 講談社(講談社文芸文庫)

・『新編 風の又三郎』 宮沢賢治 1989.2 新潮社(新潮文庫)

・『萌えいづる若葉に対峙して』 辻征夫 1998.6 思潮社

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